今や主役「サラダチキン」はどう生まれた? 「業界のお荷物」が皮を取って大ヒットに(日経トレンディネット)

 今やコンビニやスーパーなど、どこでも手に入る「サラダチキン」(関連記事:「サラダチキン戦争! 『そのまま』VS『参鶏湯』」)。そもそも、サラダチキンはどのようにして生まれたのか。サラダチキンの元祖といわれるメーカーを取材し、開発秘話や「元祖から見たサラダチキンの変化」について話を聞いた。

【関連画像】サラダチキンを発売した当初(2001年)のアマタケのギフト用商品。「ハーブ」(写真左上)、「タンドリー」(写真左下)、「たまり醤油」(写真中央下、右下)がサラダチキンとして先行販売された

●売れ残りがちな「むね肉」のために開発

 今ではどのコンビニでも必ず見かけるサラダチキンだが、その原型が誕生したのは今から20年ほど前。鶏肉の生産・加工を手がけるアマタケが、むね肉の販路を開拓するために開発した商品のひとつだった。今でこそ「脂肪分が少ないのでヘルシー」と人気の鶏むね肉だが、「日本では長い間、業界のお荷物的存在だった」とアマタケ戦略事業本部の佐藤優本部長は話す。

 昔からむね肉が好まれていた欧米と違い、つい最近まで日本ではジューシーなもも肉の人気が圧倒的に高かった。パサパサした食感のむね肉は敬遠され、売れ残りがちだったという。一羽の鶏にはほぼ同量のむね肉ともも肉がある。むね肉を売るための苦肉の策として生まれたのが、調理なしですぐ食べられるサラダチキンだった。

 岩手県大船渡市に本社を持つアマタケは、鶏肉の生産や販売を行うかたわら、30年ほど前からスーパーの精肉売り場に卸す加工品の製造・販売にも力を入れ始めた。あるカフェチェーンのサンドイッチ用具材としてパンに合うハーブ風味の鶏むね肉加工品を開発したことが、サラダチキン誕生のきっかけだったという。2001年には業務用に卸していた加工品を個包装にし、「サラダチキン」と命名してスーパーでの取り扱いを開始した。

皮を取ってから爆発的に売れた

 サラダチキンが登場する以前から、バンバンジー用の蒸し鶏やローストチキンなどは市場にあった。だが、味にバリエーションがあって飽きにくく、調理せずにすぐに食べられることから、サラダチキンが支持されるようになった。

 また、スーパーの売り場構成の変化も、サラダチキンの人気を後押しした。サラダチキンは当初、その名のとおりサラダの具材として売られていた。サラダはどちらかというと夏のメニューなので秋冬になると売り場が縮小されていたが、ヘルシーな食材を求める人が増えたことからサラダ用商品が年間を通して店頭で扱われるようになった。そのため、サラダチキンをカット野菜などといっしょに並べて売る店舗も増えてきたという。「精肉売り場、総菜売り場、サラダコーナーと、1店舗で3カ所に置かれるパターンも見られるようになった」と佐藤本部長は話す。

 2014年には、さらなる健康志向の高まりに応えるべく、それまで皮付きで販売していたサラダチキンの皮を取るという改良を行った。これによって従来品より約40%もカロリーをカットできたが、「精肉業界では『鶏肉の皮を取り除くとおいしさが失われる』という思い込みがあったので、皮なしの商品を展開するのは勇気が必要だった」と佐藤本部長は話す。同社にとって大きな賭けだったというが、これをきっかけにサラダチキンが大ブレイクしたという。

●サラダ以外のアレンジで需要増に期待

 発売以来、同社のサラダチキンはスーパーの精肉売り場に生の鶏肉と一緒に卸す形が定着していた。だが2013年にセブンイレブンが参入したことでサラダチキンの認知度がアップ。販路がぐっと広がった。また、昨年から今年にかけて多くのコンビニからオファーがあり、2016年8月にはローソンでの取り扱いを開始した。

 同社マーケティング課の巴由紀子課長は、昨年から同社コールセンターに男性からの問い合わせが増えた、と話す。また、同社オンラインショップでも20~30個まとめ買いする男性ユーザーが多いという。「オンラインショップのユーザーの男性比率が特に高いわけではないが、男性ユーザーは購入単価が高い傾向ははっきりとある」(巴課長)。

 同社が体を鍛えている男性の間でサラダチキン人気が高まっていることについて実感したのが、今年開催された健康食品の展示会に出展したときだという。サラダチキンのブースへの反響が大きいだけでなく、まるでバナナを食べるように、サラダチキンを開封してそのまま食べている男性を多く見かけて驚いたと佐藤本部長は話す。「最近の中高校生は、部活の帰りにおにぎりではなくサラダチキンを食べているという話も耳にした。また、スーパーで、近くのジムに通っているらしい体格のいい男性が10個くらいまとめ買いをする光景も実際に目にした」(佐藤本部長)。

 さらに、佐藤本部長は、サラダチキンの調理方法にも変化が起こっているのではないかと指摘する。レシピサイト上で、サラダチキンの上にチーズをのせて焼くなどのアレンジを見かけたというのだ。ハムやチャーシューのように、手軽に使える食材のひとつになりつつあるということだろうか。「サラダ以外の料理にも幅広く使ってもらえるようになることで、さらにサラダチキンの需要が高まる。伸びしろはまだまだあると感じている」(佐藤本部長)。

(文/桑原恵美子)

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細かすぎる? 次世代新幹線が分かる「5つのポイント」(日経トレンディネット)

 東海道新幹線の次世代車両「N700S」の製造中の姿が報道公開された。2018年3月に完成する予定で、各種試験を経たあと、東京五輪が開催される2020年を目処に営業運転を始めるという。現在の主力車両N700系がデビューしたのは2007年のこと。10年経つのでフルモデルチェンジ車両といっていいはずだが、いざ実車を目にすると、正直どこが変わったのか分かりにくい。今回はそんなN700Sの“細かすぎて伝わらない”5つのポイントを紹介しよう。

【関連画像】愛知県豊川市の日本車輛製造で報道公開されたN700S。手前は完成予想の模型

●【ポイント1】フルモデルチェンジなのになぜN700系?

 まず分かりにくいのが、「N700S」という名前(鉄道業界では「形式」と呼ぶ)だ。東海道新幹線の歴史を振り返ると、初代が丸顔の「0系」、2階建て車両が付いた2代目が「100系」、「のぞみ」として初の時速270キロ運転をしたのが「300系」と、順々に数字が大きくなってきた。しかし順調に“成長”したのは1999年にデビューした「700系」まで。その後は頭に「N」を付けた「N700系」となり、2013年に登場した改良版は、後ろに「Advance」を意味する「A」を付けて「N700A」となった。

 N700Aはマイナーチェンジ車両だからいいとしても、なぜフルモデルチェンジ車両なのによく似たN700Sという名称になったのか。ちなみに「S」は最高を表す「Supreme」を意味するという。

 JR東海は「N700という名称が広く親しまれているため」と説明する。それは一理あるものの、新車ということは伝わりにくいのではないだろうか。

 もう一つ考えられるとすれば、700の次の800が九州新幹線で使われており、続く900は「ドクターイエロー」など事業用の車両に割り振られているため、頭打ちにならざるを得ないのかもしれない。ただJR東日本が山形新幹線用の400系の後、E1系に“先祖返り”したように、付番ルールを大きく変えるという選択肢もあった。

 700を使い続けて現在の番号と重複しないのか気になるところだが、その心配はないとのこと。700系の各車両には719~727、N700系(N700A含む)には776~787まで割り振られている。実は700番台にはまだまだ空きはあるのだ。

 ちなみに北陸新幹線用のE7・W7系も、各車両に割り振られている番号は700番台。しかも714~726で、700系と被っている。実際にはその前に「E」(JR東日本保有車)もしくは「W」(JR西日本保有車)が付くうえ、線路がつながっているわけではないので良しとされているようだ。

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「刀」を立ち上げた元USJ森岡氏の次の一手とは?(日経トレンディネット)

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復に導いた日本を代表する戦略マーケター、森岡毅氏。11月20日、同氏が率いるマーケティングの精鋭集団「刀」は、アジア最大級のプライベート・エクイティ・ファンドである、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアとのパートナーシップ締結を新たに発表した。突如浮上した、この異例のタッグの狙いは何か。いち早く両社に話を聞いた。

【関連画像】森岡毅氏はUSJを17年1月に退任後、企業成長会社の刀を設立

 森岡毅氏が立ち上げた「刀」は、森岡氏とともにUSJのV字回復を担った今西聖貴氏(需要予測モデルの開発・運用)や立見信之氏(ファイナンス)を中核として、得意分野の異なるマーケティングのスペシャリストが結集している。クライアントの業種に合わせて最適なチームを編成し、経営者の“懐刀”として、もしくは当事者として経営や事業に参画。消費者調査や需要予測などのノウハウを基にした個人のマーケティングスキルの強化、人事評価制度や組織の構造改革などを実行し、数年かけてクライアント企業を消費者目線で連動する会社に生まれ変わらせる。森岡氏は、「刀との契約が終了した後も持続的な成長が可能になるようノウハウそのものを移植するのが、コンサルティング会社との大きな違い」と話す。同社は、すでに製造業をはじめとする複数の企業と契約し、プロジェクトを進めている。

 一方、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(以下、ベアリング)は、最も古いマーチャントバンクの英ベアリング銀行を起源とし、アジアでは香港を拠点にプライベート・エクイティ・ファンドとして20年の社歴をもつ老舗。これまでの累積運用総額は約1兆円(90億ドル、1ドル113円換算)に達し、現在運用中のファンドも約4500億円(40億ドル)という巨大ファンドだ。同社は、リストラや資産売却によって短期的に投資資金の回収を狙うファンドと異なり、投資先企業の事業拡大を中長期で支援して成長を促し、企業価値を高める投資スタイル。これまで日本では、武州製薬(医薬品製造受託会社)やジョイフル本田(ホームセンター)、プリモジャパン(ブライダルジュエリー)など7件の投資実績があり、日本での投資期間は平均して4~5年と、他のファンドに比べて長めだ。敵対的買収はせず、ファンドのなかでは紳士的な存在として知られる。

 今回のパートナーシップで、ベアリングは新規の投資案件を刀に紹介、もしくは共同で開拓する。条件が合致すれば、森岡氏や刀のメンバーが投資先の企業に経営陣および事業リーダーとしてチームで参画し、当事者として強力に事業を推進する。また、刀のクライアントに対しても、投資の必要に応じてベアリングが出資する可能性もある。この連携に関して森岡氏は、「かつてのUSJがハリー・ポッターの建設資金がどうしても必要だったように、企業には、さらなる成長に向けて大きな投資が必要な局面がある。このパートナーシップによって、刀は『経営力』と『資金力』の両面で、そのような企業も強力にサポートできるようになる」と期待を寄せる。また、中長期で企業の成長を支援するベアリングの投資姿勢は、「刀との相性が非常にいい」(森岡氏)ことも決め手になったという。

 一方、ベアリングのマネージング ダイレクターを務める丸岡正氏も、「ベアリング単独では最低でも300~400億円、できれば銀行融資などを含めて1000億円規模の巨大案件を手掛けていきたい」と話しており、両社の支援企業が確定すれば、業界に与えるインパクトは非常に大きくなりそうだ。

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ビッグデータで進化するWASHハウスのコインランドリー(日経トレンディネット)

 TREND EXPO TOKYO 2017の「成功のケーススタディー」で、自らの成功体験を語ってくれたのが、コインランドリー界に新風を巻き起こし、全国に462店舗を構える「WASHハウス」の代表取締役社長・児玉康孝氏だ。40分の公演に、200枚ものスライドを用意。成功の秘訣を出し惜しみすることなく伝えた。

【関連画像】WASHハウス 代表取締役 児玉康孝氏

 「私は今年で52歳を迎えます。大学卒業後は証券会社に勤務、その後ファストフード店に転職。さらに30歳から35歳までが不動産会社。そして36歳になるタイミングで今の会社を立ち上げました」

 創業16年目を迎えたWASHハウスは昨年、株式上場するまでに成長。「上場して野村證券に行ったときに、証券マンの方々が拍手で迎えてくれたんです。元証券マンだからでしょうか、そのときはうれしかったですね」。

●成功のキーワードは“ビッグデータ”

 「当社はいままで店舗展開してきた中で、売り上げ不振による撤退というのは1店舗もありません。これはコインランドリー事業としては驚異的なことだと思っています」と話す児玉氏。

 ポイントとなるはビッグデータだ。WASHハウスでは、各店舗の1台1台の洗濯機や乾燥機の状況を取集して、本部で管理している。「洗濯機1台1台が何時何分にどれだけの利益を生んだかもきっちりと把握できます。この高い精度を秘めたデータこそが、当社の一番の強みだと思っています」と語る。

 蓄積してきたさまざまなデータは、新店舗の展開など意思決定するにあたって高い信頼性を持っているという。これが16年間成功を続けられた理由という。

 当初、会社立ち上げにあたって貯金がほとんどない状況で、何ができるかを必死に考えたという児玉氏。さまざまこと考慮した結果、コインランドリー事業のFC展開がベストだと思ったという。

 「コインランドリーは100人いたら3人が使うというデータがあります。しかし今はアレルギー疾患者の増加やPM2.5の問題などで、利用者はさらに増えてきている。実際、店舗をつくるとその地域からお礼状が送られてくることもあるんですよ」と、コインランドリー事業の将来性の高さを、顧客の反応を交えて語ってくれた。

 さらに「コインランドリーは日本最大の店舗数を持てるビジネスだと思っています。それはコンビニよりも小さいスペースで経営できるから。さらに洗濯だけでなく、情報発信の基地になるような空間も目指しています。いずれは洗濯を無料化して、洗濯している間に近くのベーカリーやスーパーで使えるクーポンを発券して買い物を楽しんでもらう。情報を交換できるような場所づくりができればコインランドリーの立ち位置も変わっていくのではないかと思っています」。

 さらに話は海外にまで広がる。

 「海外展開も視野にあります。実は、海外のどこの国にもコインランドリーってあるんですよ。もちろん世界中どこを見ても洗濯しない国はないですし、実際、世界には20万店舗ほどのコインランドリーがあります。その市場を設計できたら面白いと思っています」と展望を語った。

 ひとり暮らしで洗濯機が無い人が行く場所、梅雨時期の乾きにくい洗濯物を乾かしにいくところ――。そんな従来のコインランドリーのイメージは大きく変わりつつある。洗濯だけでない“選択”ができる場所、そんな新しいコインランドリーの実現に期待したい。

(文/片山祐輔)

モーターショーで実感 VR/ARは商品展示の本命になる?(日経トレンディネット)

 アミューズメント施設などを中心に、徐々に体験できるスペースが増えてきたVR(仮想現実)やAR(拡張現実)。エンターテインメントだけでなく、ビジネスの場でも、商品の紹介や体験などを中心に活用が進んでいる。

【関連画像】参加者の前方に置かれたカメラで顔の向きを検出していることもあって、1人あたりのスペースはゆったり。もっとも、参加者の視界に広がる世界はさらに広大なのだが

 例えば、東京モーターショー2017の会場では、数多くのブースでVR、ARを活用したコンテンツが用意され、もはや当たり前の光景となっていた。主催者展示からして、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのPlayStation VR(PS VR)を30台接続した大がかりな仕掛けを投入してきたくらいだ。もちろん、VRやAR技術を使ってない、従来からあるシミュレータの類いも数多く見られた。すべてを含めると、全会場で30種類近くの体験型コンテンツが出展されていたのではないだろうか。

 言うまでもないことだが、VRやARといった技術を使えば、「現実には存在しないもの」を表現することが可能になる。モーターショーで耳目を集めたコンセプトカーはその最たるもので、モックアップを展示するだけでなく、VR技術を使えばその車内風景や走りまで“体感”できる。

 では、具体的にどのようにVRやARが使われていたのだろうか。モーターショーの展示を振り返ってみよう。

●PS VRを30台接続してコネクテッドカーの利便性を体験

 東京モーターショーのVR技術を用いたコンテンツで最も規模が大きかったのは、前述のように、主催者展示の「THE MAZE」だった。PS VRを30人が装着し、ゴールを目指して未来都市を走り回る、という内容だ。

 各自が操縦するクルマは、すれ違うごとにそれぞれが走行して得たデータを交換し合う。そのたびに、自車が搭載しているコースの地図は情報量を増し、ゴールへの道筋が見つけやすくなる。ネットワークにつながるクルマ「コネクテッドカー」で実現する、未来のクルマ社会の利便性をゲームを通じて体験できるようになっていたわけだ。

 ゲームとしては単純だが、幅広い年齢層の来場者に広く対応し、なおかつ「テーマをきちんと理解してもらう」という目的を考えると、これくらいシンプルな内容が落としどころとして正解なのだろう。

 まだまだ普及の途上にあるPSVR VRを体験できるという意味でもなかなかキャッチーで、ドーム型スクリーンでクルマ社会の未来を提示する「THE FUTURE」とともに、今年の主催者展示はそのスケールの大きさが際立っていた。

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「新海誠展」でしかできない“新しい体験”とは?(日経トレンディネット)

 2017年11月11日、東京・六本木の国立新美術館で、アニメーション映画『君の名は。』を手がけた新海誠監督の展覧会「新海誠展『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」がスタートした。静岡会場、長野会場に続き3会場目の開催となるが、国立新美術館ではこれまでの2倍程度に規模を拡大。新海監督の商業デビュー作である短編アニメーション『ほしのこえ』(2002年)から、国内で1900万人を動員した大ヒット作『君の名は。』(2016年)までの絵コンテや作画などを約1000点展示している(関連リンク「詳しすぎてネタバレ注意! 『新海誠展』の中身」。

【関連画像】「新海誠展『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」は国立新美術館 企画展示室 2Eで2017年11月11日~12月18日まで開催(火曜日休館)。観覧料は一般1600円、大学生1200円、高校生800円。前売り、団体料金はそれぞれ200円引きになる

 「映画をどうやって展示するのかと思っていたが、(会場に入ってみると)ディスプレーが何十枚もあり、半ば仕事場にいるようだった」と、新海監督。また、『君の名は。』で主人公・立花瀧を演じ、本展覧会の音声ガイドも担当した俳優の神木隆之介氏は、「(国立新美術館の)天井の高さが生かされていた。展示物の配置も監督の作品のイメージに近く、ずっと過ごしていたくなるような空間だった」と観覧した感想を語る。

 大ファンを公言する神木氏をはじめ、新海作品には若い世代を中心に国内外に熱狂的なファンが多い。筆者は『君の名は。』を含めた新海誠作品をひと通りチェックしているが、はたしてどのくらい楽しめるのだろうか。

音声ガイドを借りるのがおすすめ

 会場には『ほしのこえ』から『君の名は。』までの全6作が公開順に展示されていて、新海監督のデビューから15年の足跡をたどる形になっている。各作品の展示スペースに足を踏み入れると、劇中の場面カットや絵コンテとともに、真っ白な壁にその作品の登場人物のセリフが書かれているのが目に飛び込んでくる。

 展覧会を盛り上げるのは、神木氏の音声ガイドだ。6作品全て、作品の概要と「神木視点で語る」という2つのチャプターで構成されており、聞いているとまるで神木氏と一緒に観覧しているような気分になれる。特に『君の名は。』の展示スペースでは、「瀧くんが隣で喋っている……!」という不思議な感覚に襲われた。

 また、作品を見ていない人も、壁に投影された作品のモチーフの雨や桜の映像を見ているだけで、世界観に入り込めるのではないだろうか。つい展示物に近寄って眺めたくなるが、まずは音声ガイドに耳を傾けながら空間全体を眺めることをおすすめしたい。

●監督に褒められた気分になれる“下書き”も

 新海作品といえば、写真のように美しい映像というイメージがあるが、色が塗られて完成する前の“下書き”にも注目したい。新海監督がスタッフにイラストと文字で修正を指示した上で、「ていねいにありがとうございます! 2人の芝居カワイイですね!」「すばらしい」「おかげで良いシーンになりそうです」というような労いや褒め言葉を書き添えた作画資料がたくさん展示されている。新海監督が記者会見で「今回の展覧会は僕とスタッフとのコミュニケーションの過程でもある。来場者に僕たち製作陣がどうやってコミュニケーションをとっていったのかを見てもらいたい」と話していた通り、現場でのやりとりが目に浮かんでくるようだ。

 また、作品に用いた技術の詳しい説明や、製作当時のPC環境を再現しているコーナーなど、なかなか見られない舞台裏の展示も。まるで自分が新海監督のスタッフになったような気分になれる。

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RIZAPがアパレルを買収した理由とは?(日経トレンディネット)

 「結果にコミットする」のテレビCMで一躍有名になったRIZAP(ライザップ)グループ。マンツーマンで指導を行うプライベートジムに加え、英会話、ゴルフ、料理と次々に新サービスを立ち上げる一方、今春にはカジュアル衣料専門店「ジーンズメイト」を買収と、事業をさらに活発化させている。RIZAPグループが目指すものとは何か。同社取締役の岡田章二氏が語った。

【関連画像】RIZAPグループ取締役事業基盤本部本部長・岡田章二氏

 講演は日経トレンディの人気連載「ビジネスなるほどゼミ」で紹介した企業に現時点での最新状況を語っていただく「成功のケーススタディー」として行われた。しかし岡田氏のセミナーはこんな言葉から始まった。

 「わが社はこれからいろいろなことを成し遂げようとしている段階。そのため、『成功』という言葉は取って、現在の取り組みをお話しします」

 岡田氏の仕事の経歴は、システムエンジニアからスタートした。これまでにユニバース情報システムやユニクロを運営するファーストリテイリングなどで、業務改革と業務システムの構築などを担当してきたという。

 RIZAPグループには2016年に入社。現在は事業基盤本部 本部長として事業部門とIT部門を統括している。従来、技術者として何度も講演会を行ってきたという岡田氏だが、今回は会社全体にフォーカスした話をすべく、まずは多くの人が興味を持つ、“なぜRIZAPに通うと驚くような痩身が実現するのか”について、その仕組みを聞かせてくれた。

 「RIZAPに来ると、特別なことをしていると思っている方が多いのですが、そうではありません。マンツーマンで指導を行うために、まず徹底的なカウンセリングを実施し、痩せたあとの目標を聞きながら、トレーニングのプログラムを設定。実際トレーニングを開始すると、食事の面やメンタルの面までトレーナーがサポート行っています。一般のジムにおいて“痩せる”“痩せない”はあくまでも自己責任ですが、RIZAPではトレーナーの責任です」

 さらに話はトレーニング中の食事に関しても言及した。

 「日本人は糖質の摂取量が多すぎるのです。どうコントロールすれば食事で痩せやすい体を作れるのか、そこに秘訣があります」。RIZAPでは、これまで全体で約9万人の会員のボディーメイクに携わってきたというから驚きだ。

 話はジーンズメイト買収に。実は会員が痩せたことによる変化と、アパレル業への進出は大きく関係しているというのだ。

 「痩せた会員の方は誰もが、着る服がなくて困っているといいます。しかも痩せたとなるとボディーラインを強調した服を着たくなる。ところがいざ鍛えられた体に合う服を探すと、これがなかなかない」

 そこに同社の次なる戦略があった。常に顧客に寄り添う企業でありたいという理念から、ファッションの面でも顧客の希望に答えるのは当然の流れだった。岡田氏はアパレル業界にも従事していた経験を生かし、新生ジーンズメイトでリーズナブルながら高品質のウェアを販売すべく努力の最中だという。

 また、買収前のジーンズメイトは業績が悪化し、経営存続のための改善策を打つことも急務だった。その経営再建こそ、岡田氏の手腕が問われる重要な業務だという。

 「店舗閉鎖の見極めや、広げすぎたジーンズメイトオリジナルブランドをどう集約するのか、これまで独自に手を打ってきたものの、業績アップを実現できなかったジーンズメイトの従業員の士気をどう上げるべきか…」

 課題は山積している。しかしこの大きな課題に岡田氏は一つひとつ対応し、明るい兆しが見え始めたところだという。

 結果にコミットするRIZAPグループ。岡田氏もまた、自身が立てたさらなる目標にコミットすべく努力を続けている。年齢を重ね、成功を収めてもとどまることのない岡田氏の姿勢に、受講者も大いに刺激を受けた講演会となった。

(文/田中あおい)

ブランド模倣品の撲滅に挑む、コメ兵の鑑定付きフリマアプリ(日経トレンディネット)

 「300人の鑑定士を抱える当社がフリマ(フリーマーケット)アプリ市場に参入することで、リユース市場の課題であるコピー品の排除に取り組んでいく」

【関連画像】フリマアプリに参入したコメ兵の東京・銀座店の店内

 2017年11月7日、ブランド品リユース最大手のコメ兵はスマートフォン向けアプリ「KANTE」を投入して、フリマアプリ市場に参入すると発表。同アプリの発表会に登壇した石原卓児社長は、アプリ提供によって、より安心安全なフリマ市場の確立を目指すと宣言した。

 誰もがスマートフォンで簡単に売り買いできるフリマアプリの誕生により、CtoC(消費者間取引)市場が急拡大している。経済産業省は2017年4月にフリマアプリの推定市場規模を初めて発表した。同省は2016年の推定市場規模を3052億円と試算する。フリマアプリの誕生からわずか4年でこの規模にまで膨らんだ。

 フリマアプリの最大の特徴は利用が簡単であること。スマホで商品を撮影して、すぐに出品できる。こうした手軽さが受けて、それまでネットオークションサイトを使ったことがない若年層や女性を中心に支持を集めた。フリマアプリ代表格であるメルカリ(東京都港区)が提供する「メルカリ」のダウンロード数は5000人を超える。毎日100万点を超える商品が出品されており、1日当たりの取引額は100億円超に達している。

 ところが市場が広がる一方で、新たな課題も次々に生まれている。ブランド模倣品の流通の温床と化していることもその1つ。財務省が発表している2017年1~6月の税関における「知的財産侵害物品の差止状況」によれば、輸入差止件数は1万5393件(前年同期比11.1%増)で、上半期の輸入差止件数としては過去3番目の高水準だったという。このうち98%を占めるのが偽ブランド品などの商標権侵害物品だ。

 模倣品が作られるブランドの幅も広がっている。「一昔前はルイ・ヴィトンやボッテガ・ヴェネタなどの高級ブランドが中心だったが、最近ではアークテリクスなどのアウトドアブランドの模倣品まで出回っている。もはや当社で取り扱うほとんどの商品に偽物が存在すると言っても過言ではない」。コメ兵の執行役員の藤原義昭マーケティング統括部長はこう明かす。

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家電のトレンドは“見える化” 家電芸人も効果を実感(日経トレンディネット)

 「TREND EXPO TOKYO 2017」2日目には、今、売れているのトレンドを紹介するセミナー「キーワードは“可視化” 家電タレントと見る最新家電」が開催された。ゲストは、テレビ朝日「アメトーーク!」の“家電芸人”としても知られるお笑いコンビTKOの木本武宏さんと、家電製品総合アドバイザーなどの資格を持つ女優・タレントの奈津子さん。進行は、IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志さん。会場には、200人超の来場者が集まった。

【関連画像】登壇したのは、左からIT・家電ジャーナリストの安蔵靖志さん、TKOの木本武宏さん、女優・タレントの奈津子さん

 まずは安蔵さんが、「最新の家電製品のトレンドをひと言で言うなら“可視化”。家電製品とスマートフォンのアプリを連携させることで、これまで実感しにくかった家電の効果が目に見えるようになる」と説明。空気清浄機、ロボット掃除機、ヘルスケア家電の3ジャンルから、各3製品を例に機能を解説していく。

 空気清浄機の場合は、スマートフォンのアプリ上で、室内のホコリやPM2.5の量、においの強さなどを確認できる。空気清浄機の稼働前と稼働後を比較することで、どれくらい室内の空気がきれいになったかが分かるという。

 今回紹介したダイソンの「Dyson Pure Hot+Cool」、シャープの「KI-HX75」、ブルーエア「Blueair Classic」のうち、Blueair Classicを実際に使っているという奈津子さん。「アレルギー体質と言われたのを機に購入しました。安くはない買い物なので、目に見えるお得感があると満足度が違います」とユーザーならではの視点で説明した。

●室内のどこにゴミがたまっていたかがすぐ分かる

 続くロボット掃除機は、木本さんも奈津子さんも持っているとのこと。「ダイソンの『Dyson 360 Eye』を買いました。スマホから操作できるから、旅先などからでも操作して掃除をしておいてもらえるのが便利」と話すなど、使いこなしている奈津子さんに対し、木本さんは「ルンバは便利なんだけど、今は使ってないんですよ。雑誌なんかが床に積んであると、ルンバが掃除ができないから」とやや持て余し気味のようだ。でも、そこは家電芸人。すごく進化してるんでしょ? 使いこなせる生活をしたいなぁ」と最新機種に興味津々のようだった。

 ロボット掃除機も、空気清浄機同様、スマホアプリで掃除の効果が見える。ただし、ロボット掃除機の場合は掃除したエリアのマップを作成し、ゴミの量に応じて各箇所を色分けして表示する。「ああ、『この人、ここばっかり汚しよる!』とか分かってしまうわけやね」と木本さん。「ええ。ロボット掃除機は自動ゆえに本当にまんべんなく掃除してくれているのか不安になる人も多いと思います。でも、こうして目に見えると安心できますよね」と安蔵さんが説明した。

 パナソニックの「RULO MC-RS800」の場合は、自分で室内マップを作成し、ロボット掃除機に掃除をしてほしくない場所を指定する機能もある。「ペットとかいる場所は避けて、とかできるわけだ」と納得する木本さん。「ルンバなどは『バーチャルウォール』と呼ばれる機器を置くことで、掃除をしないエリアを設定できますが、RULOはそれが要らないんです」(安蔵さん)とのことだった。

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バルミューダ寺尾氏が「感」を磨くべくやっていること(日経トレンディネット)

 本連載は「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか。そして、どのように磨けばいいのかについて、成功談も失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

【関連画像】バルミューダの寺尾玄社長は1973年生まれ。17歳で高校を中退、約1年の海外放浪を経て、約10年間、音楽活動に携わる。バンド解散後、2003年にバルミューダデザイン設立(2011年、バルミューダに社名変更)。2010年に発表した扇風機「GreenFan」で一躍、家電業界の注目を集めた。2015年の「BALMUDA The Toaster」に続き、「BALMUDA The Pot」「BALMUDA The Gohan」「BALMUDA The Range」を発売

 今回は、バルミューダの社長を務める寺尾玄さんの最終回です。前回(バルミューダ寺尾社長の原動力は「褒められたい」)は、同じ「楽」でも「たのしい」と「らく」は真逆な感覚であること、会社における地位とは「偉い偉くない」ではなく「権限と責任」を指し示すものであること、「自分に負けたくない」体験談などついて語っていただきました。最終回はご自身がどうやって「勘」や「感」を磨いてきたのか、これからバルミューダという企業はどこに向かっていくのか、寺尾さんの目指すゴールは何なのか―――。突っ込んで聞いてみました。

●「感」を磨くためには「人のことを考える」

川島: 寺尾さん、「勘」や「感」って磨くことができると思いますか?

寺尾: 感覚は、間違いなく磨くことができるものです。恐らく限界がないくらい、磨き込めるのではないでしょうか。

川島: えっ、誰にでも磨ける可能性があるということですか?

寺尾: そうです。でもそのために、やり続けなければならないことがあります。それは「人のことを考える」ことです。

川島: 「人のことを考える」? 仕事の場面で具体的に、どういうことを考えればいいんですか?

寺尾: そんなに難しいことではないのです。人が営むすべての活動は、他人のためにやっているものばかり。つまり、すべてのモノやサービスは、人の役に立つために存在しているのです。私は芸術もそうだと考えています。たとえば、画家は自分の描いた絵をアトリエに置いておきたいわけでなく、誰かに見てもらいたいと思っているのです。音楽も同じことで、何らかのかたちで誰かに聞いてもらいたいと思って、表現活動を営んでいるのではないでしょうか。「ウケるウケない」は別にして、人は誰かの役に立ちたいと思って行動しているのです。

川島: 言われてみれば、腑に落ちるところがあります。寺尾さんは若いころ、ロックミュージシャンをやっていましたが、そのときも、人の役に立ちたいと考えていたんですか?

寺尾: 音楽活動については、思春期に聴いたブルーハーツや尾崎豊から深い影響を受けました。たとえば、『この支配からの卒業~』と歌われて、「支配の先には必ず卒業がある、僕もまだまだやれることはあるんだ」と、辛い時期にポジティブなエネルギーをもらったのを覚えています。私がロックスターになりたいと思ったのも、あのときにもらった宝物のようなエネルギーを他の人に伝えて喜んでもらったり、勇気にしてもらえたりしたらうれしいと考えたから。そして、人に褒められたかったから(笑)。つまり、誰かの役に立って褒められることは、あらゆる人の活動を根底で支えているのです。

川島: 「人のことを考える」が、誰かの役に立って褒められることにつながっていくわけですね。

寺尾: そうです。そしてこれは、社長としての私が会社を率いていくときも同様なのです。人のことを考える、つまり、人を喜ばせる、人のために働く会社でなければならない。まだまだできていないことではありますが、人のために働けている会社かどうかは、とても大事なことととらえています。