GeForce GTX 1070 Tiは中身も性能もほぼGTX 1080だった

最新パーツ性能チェック
第222回

2017年11月02日 22時00分更新

文● 加藤勝明 編集●北村/ASCII編集部

 2017年10月26日、NVIDIAはPascal世代の新たな準ハイエンドGPU「GeForce GTX 1070 Ti」を発表、日本国内では11月2日22時より販売が始まった。

GeForce GTX 1070 Ti

 型番から分かる通り、GTX 1070より上だが、GTX1080よりは下という位置付けの製品となる。なぜ今このゾーンに製品を投入したかといえば、ライバルAMDのVega 56の性能がGTX 1070をわずかに上回ったので、NVIDIAとしてはこれに対抗する必要があるためだ。

 GTX 1080はFounders Editionが普通に流通していたが、GTX 1070TiのFounders EditionはNVIDIAの直販サイト専売で、一般のパーツショップに出回るのはサードパーディー製のオリジナルクーラー搭載モデルとなる。

 今回はFounders Editionのほかに、Colorful製のオリジナルクーラー搭載モデルである「iGame GTX1070Ti Vulkan X」を試すチャンスに恵まれた。



GeForce GTX 1070TiのFounders Edition。いわゆるリファレンスモデルだ Colorful製の「iGame GTX1070Ti Vulkan X」

 気になる価格はパフォーマンスを見てからにするとして、リファレンスデザインであるFounders Editionと強力なクーラーを備えたVulkan Xの差はどの程度か? さらにライバルRadeon RX Vega 56との性能差はどの程度なのか? などをチェックしてみたい。

GTX 1070Tiのクロックは横並び

 まずはGTX 1070/1080とGTX 1070Tiのスペックを比較してみよう。まず注目したいのはCUDAコア数がGTX 1070の1920基からGTX 1070Tiでは2432基に激増している点だ。

 Pascal世代のGP104コアはCUDAコア128基が集まったTPC(Texture Processor Cluster)を5基(合計640基)束ねるとミニGPUというべきGPC(Graphics Processing Cluster)となるが、そのGPCを4基束ねたものがGTX 1080、3基でGTX 1070となる。

 GTX 1070TiはGPCは4基だが、1基のGPCのみTPCが1つ無効化されている。ほぼ(95%くらい)GTX 1080といって差し支えない。

アーキテクチャー GP104(Pascal) GP104(Pascal) GP104(Pascal)
製造プロセス 16nm FinFET 16nm FinFET 16nm FinFET
CUDAコア数 2560基 2432基 1920基
コアクロック 1607MHz 1607MHz 1506MHz
ブーストクロック 1733MHz 1683MHz 1683MHz
テクスチャーユニット数 160基 152基 120基
ROP数 64基 64基 64基
メモリークロック(相当) 10GHz 8GHz 8GHz
メモリタイプ GDDR5X GDDR5 GDDR5
メモリーバス幅 256bit 256bit 256bit
メモリー搭載量 8GB 8GB 8GB
TDP 180W 180W 150W
外部電源 8ピン 8ピン 8ピン

GTX 1070TiはTPC1基分の回路(赤枠部分)が無効化されている。GTX 1070の場合はGPC1基分(水色枠部分)が存在しない

 だがCUDAコア数以上に重要なのはGTX 1070TiではGPUのクロックがどのメーカーでもベースクロック1607MHz、ブーストクロック1683MHzという共通設定になっている点だ。CUDAコア数がほぼGTX 1080という設定になっているため、オーバークロック設定次第ではGTX 1070TiのOC版がGTX 1080の性能を超えてしまう可能性があるからだ。

 CUDAコア数とブーストクロックがほんのわずかに高いこと、VRAMの帯域(10Gbpsまたは11Gbps)が太いことの2点がGTX 1080(Founders Edition相当の製品の場合)の強みだが、GTX 1070Tiとスペックが近すぎるためメーカーによるファクトリーOCを許可するわけにはいかなかったのだろう。

 ただオーバークロック不許可といってもファクトリーOCだけの話で、ユーザーが手動でオーバークロックする、あるいはメーカーがワンタッチで“OCモードに切り替える”ような運用は許可されている。

 主なGTX 1070Ti搭載カードのスペックを下表にまとめた。これを見ると、定格クロックはどの製品も横並びだ。ASUSとGIGABYTEの製品のみOCモードの値が記載されていたが、いずれも同梱のお手軽OCツールを用いた際のクロックである。

ASUS ROG-STRIX-GTX1070TI-A8G-GAMING 1607MHz 1683MHz 1683MHz 1759MHz
ASUS Turbo-GTX1070TI-8G 1607MHz 1683MHz 1645MHz 1721MHz
Colorful iGame GTX 1070Ti Vulkan X 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
GIGABYTE GeForce GTX 1070 Ti Gaming 8G 1607MHz 1683MHz 1632MHz 1721MHz
MSI GeForce GTX 1070 Ti Gaming 8G 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
MSI GeForce GTX 1070 Ti Titanium 8G 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
ZOTAC GeForce GTX 1070 Ti AMP Extreme 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
ZOTAC GeForce GTX 1070 Ti AMP Edition 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
ZOTAC GeForce GTX 1070 Ti Mini 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
Palit GeForce GTX 1070Ti JetStream 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
Palit GeForce GTX 1070 Ti Dual 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし
玄人志向 GK-GTX170Ti-E8GB/White 1607MHz 1683MHz 記載なし 記載なし



「GPU-Z」でGTX 1070TiのFounders Edition(左)とColorful製のもの(右)の情報を拾ってみたところ(「Subvendor」欄の記述に注目)。Colorful製のカードは背面のスイッチをTurboモードにしているが、クロックは定格のままだ



GTX 1070TiのFounders Editionの外観はGTX 1070のそれと同じ。唯一ロゴだけが異なる Founders Editionの外部電源は8ピン×1。ここもGTX 1070や1080の仕様と共通だ



Colorfulの「iGame GTX1070Ti Vulkan X」は、トリプルファンを搭載した大型クーラーを特徴とする。カード長は315mmとGTX 1080TiのOCモデル並だ Colorful製GTX 1070Tiの外部電源は8ピン×2。クロックが各社横並びであっても、基板設計に関係する部分は各社のやり方でいいようだ



Founders Editionの映像出力端子はDisplayPort×3+HDMI+DVIだが、Colorful製のカードではHDMIとDisplayPortが2系統ずつ用意されている。またOCボタンも用意されているがGTX 1070Tiの制約からボタンを押してもOCされるわけではない Colorful製GTX 1070Tiカードの背面。バックプレートでガッチリと覆うことでカードの歪みを防止している。カード後ろ側一部がアクリルカバーになっており、通電時はここがLEDでライトアップされる





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Core i9-7900X&Core i7-7800Xレビュー、全コア4.5GHz OCで見えた新世界

最新パーツ性能チェック
第216回

Broadwell-EにCore i7-7700K、Ryzen 7と大激突

 インテルの新しいエンスージアスト向けCPU「Core X」シリーズの第1弾である「Core i9-7900X」、「Core i7-7820X」、「Core i7-7800X」の販売が7月14日から始まる。この3製品は開発コード“Skylake-X”と呼ばれていたもので、今年初頭の段階ではSkylake-Xの投入はもう少し先と予想されていたが発売が前倒しになった。この前倒しの理由は安価でもコア数が多くマルチスレッド性能が高いことで話題となった、AMDの放った黒船こと「Ryzen 7」シリーズの登場が影響していることは想像に難くない。

 前回の記事は最上位であるCore i9-7900Xと、後日発売予定のKaby Lake-Xこと「Core i7-7740X」をテストしたが、Core i9-7900Xは初期に製造されたエンジニアリングサンプル(ES)版ということで、BIOS上の表記(Core i7と認識される)が間違っていた。

 しかし、今回は製品版のCore i9-7900Xを入手。さらにES版ではあるが一番安い6コア/12スレッドモデルである「Core i7-7800X」も触る機会ができた。目下のライバルであるRyzen 7 1800X(真のライバルはThreadripperなのだが……)との比較を含め、もう一度Core Xシリーズの評価をしてみたい。

今回入手したCore i9-7900X。製品版なので刻印がしっかり見える。右上部分にある小さなチップはRFIDらしいが、これはXeonの管理用チップであるためSkylake-Xでは使われていないようだ。

Broadwell-Eから何が変わったかまずはおさらい

 では改めて今回登場したCore Xシリーズのスペックを眺めてみよう。比較用として前世代、つまりBroadwell-E世代のCore Xシリーズと、メインストリームを担うKaby Lake-S世代である第7世代CoreシリーズのK付きモデルのスペックも掲載した。なお、新しいCore XシリーズはCPUソケットにLGA2066を採用しているため、旧世代のBroadwell-E(LGA2011-v3)とは物理レベルで互換性がない。ちなみに価格は新Core Xシリーズの予約価格、旧世代CPUに関しては初値を掲載している。

Skylake-X及びKaby Lake-X世代のCore Xシリーズのスペック表。

 7月14日に発売となるSkylake-X世代の3製品における一番の見どころは、1世代前の製品に比べ、価格が約半額近くまで下がっていることだろう。特に(現時点での)最上位であるCore i9-7900XとCore i7-6950Xの価格差が凄まじい。

 スペック面では今回発売されたSkylake-Xの3モデルすべてについてターボブースト発動時の最大クロックは4GHzを超えていること、さらに最下位のCore i7-7800X以外は“改良版”TBM3.0(Intel Turbo Boost Max Technology 3.0)に対応しており、「最大2コア」が4.5GHzにブーストされる。これまで消費電力などの関係でコア数が増えてもクロックが低い製品が多かったが、今回はかなりギリギリを攻めている。メモリーもCore i7-7800X以外はDDR4-2666までのサポートになっている点からも、物理8コア以上の製品のパフォーマンスアップにかなり注力していることがわかる。

Core i7-7800Xの情報を「CPU-Z」で拾ったところ。ES版なのでSpecification欄の最後に「(ES)」と記されている。TDP表記が125Wなのは、最新CPU-Z(ver 1.8.0)よりも古いせいだと思われる。

こちらはCore i9-7900Xの情報。前回の記事では「Core i7」表記だったが、今回試用した製品版ではCPU-Z(現在公開中の最新版より微妙に古いが)でもCore i9表記になっている。SteppingやRevision表記に変化はない。

 そしてもうひとつ注視したいのはL3キャッシュの搭載量が大きく減っていることだ。Broadwell-Eではコアあたり2.5MBだったものが、Skylake-Xでは1.375MBになってしまった。だがそのぶんL2キャッシュを従来(256KB/コア)の4倍である1MB/コアに増やしている。従来のCore XシリーズとメインストリームのCoreプロセッサーにおけるCPUの基本構成はほぼ共通でコア数でスケールしたものというのがこれまでの常識だったが、Skylake-Xでは大きく変化させたことになる。

Core i7-7820X以上のCPUはTBM3.0に対応しているが、これは最大2コア(どのコアかはCPUにより異なる)までがブーストされる。1ないし2スレッドしか使わないような処理で威力を発揮するという訳だ。従来は1スレッドのみだったので、この図(インテルの資料より抜粋)では“IMPROVE”(改良)と表現している。

従来のCoreプロセッサーのL2キャッシュはコアあたり256KBで共有L3キャッシュを大きくとる設計だったが、Skylake-XではL2キャッシュがコアあたり1MBとなり、その反面L3キャッシュはコアあたり(最大)1.375MBに減らされている。しかもキャッシュのメカニズムも包括的キャッシュから排他的キャッシュシステムに変わった。ちなみに、キャッシュの違いについては大原先生のこちらの記事(http://ascii.jp/elem/000/000/569/569422/)が最高にわかりやすい。

 Skylake-XではCPUの内部構造レベルで変更が施された一方、Kaby Lake-XはKaby Lake-SをそのままLGA2066に移し替えたような製品となっている。動作クロックが微増したこととCPU内蔵GPUが省かれていること、TDPが91Wから112Wに増えたという違いはあるが、キャッシュ構造やPCI Expressのレーン数はKaby Lake-Sとまったく同じだ。まさにオーバークロック(以下、OC)することを前提にしたCPUと言えるだろう。



前回のレビューでも紹介済みのCore i7-7740XのES版。ヒートスプレッダーの形状が微妙に縦長、さらにRFIDチップも搭載されていない。

CPU-ZによるCore i7-7740Xの情報。L2キャッシュやL3キャッシュの構成はKaby Lake-Sと一緒だ。

 今更だが新Core Xシリーズに合わせてリリースされた、Intel X299チップセット(PCH)についても軽くまとめておきたい。1世代前であるX99から一気に(X199を飛び越えて)X299までジャンプアップしたわけだが、内容的にはインテル200シリーズとほぼ同じと言ってよい。CPUとPCH間の接続バスがPCI Express 3.0相当のDMI3.0(従来はPCI Express 2.0ベースのDMI2.0)にグレードアップ。さらにPCH側から引き出されるPCI Expressバスも3.0仕様(従来は2.0止まり)、最大24レーンぶん引き出せる。

 ストレージまわりもZ270よろしく、OptaneメモリーやNVMeを使ったRAIDアレイの構築(Intel Rapid Storage Technology for PCI Express Storage)にも対応する。Core Xシリーズ向けチップセットはメインストリームよりもやや遅れ気味であることが多かったが、今回のX299でメインストリームに追いついたわけだ。あるいは、VROCこと“Virtual RAID On CPU”機能があるぶん、微妙に抜いたとも言える。

X299のブロック図。DMIが2.0から3.0になったこと、IRSTが少し進化したこと以外は、全体の構造はほぼ同じ。Optaneメモリーにも対応している。

 Skylake-Xはクアッドチャンネルメモリー&PCI Express×28レーン以上なのに対し、Kaby Lake-Xはデュアルチャンネルメモリー&PCI Express×16レーンのみという仕様の違いを吸収するため、X299搭載マザーボードは組み合わせるCPUによって使えるメモリースロットやPCI Expressスロットの帯域が変わる。PCI Expressスロットの帯域についてはマザーボードの設計も絡むので割愛するが、メモリースロットに関してはSkylake-X装着時はCPUの両側にある合計8本のスロットが使えるが、Kaby Lake-X装着時は片側4本しか使えないようになる。

Kaby Lake-XをX299搭載マザーボードに装着する場合は、CPUの片側(通常ATXメインパワーコネクター側)4スロットしか使えない。挿し方のパターンはKaby Lake-Sと同じ(検証に試用したASUS「ROG STRIX X299-E GAMING」のマニュアルから抜粋)。

Skylake-XではCPUの両側のメモリースロットがすべて使用できる。



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Optane Memoryが実はDドライブのキャッシュでも使えるという事実

32GBモデルをIntel SRTでも使ってみた

 Optane Memoryの32GBモデルの販売が始まった。Optane Memoryは、ストレージ向けのキャッシュソリューションで、主にHDDのキャッシュとして利用することを想定した製品である。Optane Memoryの16GBモデルのレビューはすでに行なっているので、本稿では32GBモデルのOptane Memoryをあれこれいじってみた結果をレポートしよう。

そもそもOptane MemoryはNVMe SSD

 最初にOptane Memoryについておさらいしておこう。本稿で紹介しているOptane Memoryは、IntelとMicronが共同開発した不揮発性メモリー「3D XPoint」を採用している点が特徴のストレージ製品である。主にHDDのキャッシュとして利用することを想定した製品となっており、記録容量は16GBのモデルと32GBのモデルが用意されている。

 Intelでは以前「Smart Response Technology」(SRT)というSSDをストレージのキャッシュに利用する機能をチップセットに搭載しているが、Optane Memoryで実現するキャッシュ機能はこの拡張版に相当する機能だ。なお、Optane Memoryそのものは容量が少ないだけで、“普通”のNVMe SSDとして設計されている。このため、OS起動ドライブとして利用することも可能な製品となっている。

 Optane Memoryのストレージ単体としてみたときの特徴は、3D XPointという高速な不揮発性メモリーを採用していることで小容量でも読み書き速度が非常に速く、寿命も従来のNANDメモリーと比べて一桁以上長いことである。例えば、現在の主流のTLC NANDメモリーでOptane Memoryと同容量のSSDを設計すると、16GBモデルなら読み込み速度で約10分の1、書き込み速度は6分の1ぐらいとなる。これから考えると、Optane Memoryは容量の割には非常に高速な製品と言えるだろう。

Intel RSTドライバーをインストールする前のデバイスマネージャーの画面。Optane Memoryは“普通”のNVMe SSDとして認識され、Windowsの標準インボックスドライバーで動作している。

プラットフォーム機能としてのOptane Memory

 一方で、Optane Memoryには“プラットフォーム機能”としての側面もある。同社ではOptane Memory及びそのロゴを「個々のコンポーネントで構成された“プラットフォーム機能”を表す」としているからだ。Optane Memoryのプラットフォーム機能とは、Optane Memory対応機器で実現するシステムドライブ(OSの起動ドライブで、通常はCドライブとなる)のキャッシュ機能である。

 対応機器の詳細は公式情報を参照してほしいが、基本的には、ストレージとして販売されているOptane Memoryに加え、Intelの最新チップセット「200シリーズ」を搭載し、かつ対応UEFIを適用したマザーボード、CPUにはKaby Lakeこと第7世代Coreプロセッサーを必要とする。

 また、マザーボードに搭載されているM.2スロットは、PCHに接続されている必要があることに加え、「PCH Remapped PCIeコントローラー」機能をサポートしていること。そして、インテルのRST(Rapid Storage Technology)15.5以降のドライバーまたはOptane Memory用に配布されているドライバーをインストールする必要もある。

 なお、PCH Remapped PCIeコントローラーの機能は、NVMe SSDを利用してRAIDを構築する場合に必須の機能でもある。このため、NVMe SSDのRAIDをサポートしたIntel 200シリーズチップセット搭載マザーボードと第7世代Coreプロセッサーを利用していれば、Optane Memoryのプラットフォーム機能を実現するためのハードウェア要件を基本的には満たすことができる。

 また、Optane Memoryのプラットフォームで加速できるストレージは、512バイトセクターのストレージまたは512バイトセクターのエミュレーションを行なっている512eタイプ(AFT)のSATA接続のストレージに限定されている。しかし、4KネイティブフォーマットのHDDやSSDは、一般的にはほとんど販売されていない。このため、一般的なユーザーの利用環境であれば、加速するストレージが問題となってOptane Memoryのプラットフォーム機能が実現できないことはないだろう。

 と、このようにプラットフォーム機能としてOptane Memoryを利用するとさまざまな制限があり、その中でもOS起動ドライブでしか使えないという点が導入のハードルを高くしている。また、RAID機能を使うということは、UEFIでSATAの動作モードをAHCIからRAIDに変更しなくてはならないため、AHCIで運用しているユーザーはOSを新規インストールしなければならないのも難点だ。

 となると、すでにOS起動ドライブで高速なNVMe SSDを使っているユーザーにとっては、この2点のせいでなかなか扱いづらい製品に思える。しかし、後述するが32GBモデル限定で、実はOS起動ドライブではないDドライブなどのデータ格納用ドライブでも、Optane Memoryをキャッシュとして使う方法がある。順序立てて説明していこう。

OSを新規インストールしなくてもキャッシュ機能を利用可能

 Optane Memoryをストレージキャッシュとして利用する方法は2つある。1つは、対応機器で利用する場合のOptane Memoryプラットフォームとしてのキャッシュ機能である。もう1つは、Intel SRTを利用したキャッシュ機能だ。Intel SRTは、9シリーズチップセット以降、NVMe SSDのサポートを行なっており、NVMe SSDをSRTのキャッシュとして利用できるようになっている。ストレージとしてのOptane Memoryは、OSからは単なるNVMe SSDとして認識される。このため、SRTを利用してもOptane Memoryをストレージキャッシュとして利用できるのだ。

 Intel SRTを使えば、Intel 100シリーズチップセットなどのプラットフォーム非対応機器でもOptane Memoryをキャッシュとして利用できる。ただし、Intel SRTでの利用は、上記のOptane Memoryプラットフォームの要件を満たす利用方法ではない。つまり、Intelが公式にサポートしている利用方法ではないので、自己責任で利用することになる。

もちろん、Optane Memoryをプラットフォーム対応機器で利用すると、Optane Memoryのプラットフォームのキャッシュとして利用できるほか、Intel SRTのキャッシュとしても利用できる。

 また、Optane Memoryのキャッシュ機能の利用はOSの新規インストールを行なわなくても、現環境から移行できる。例えば、すでにSATAのHDD/SSDをシステムドライブとして使っている環境にOptane Memoryのキャッシュ機能を追加することが可能だ。逆に速度が遅くなる可能性があるため利用者はいないと思うが、OS起動を行なっているNVMe SSDにキャッシュとして追加することもできる。

 次にOptane Memoryをストレージキャッシュとして利用するための設定についてだが、Optane Memoryをプラットフォーム機能として利用する場合も、Intel SRTで利用する場合も、キモとなるポイントはまったく同じだ。1つは、UEFIの設定変更。もう1つは、Intel製のデバイスドライバーのインストールである。

 UEFIの設定は、CSM(Compatibility Supported Module)の設定を「オフ」または「UEFI First」に設定することに加え、SATAの動作モードを「RAID」または「Intel RST Premium With Intel Optane System Acceleration(RAID)」にセットし、Optane Memoryを装着したM.2スロットの「PCH Remapped PCIeコントローラー」の機能を「オン(Enable)」にすることである。

 PCH Remapped PCIeコントローラーの機能の設定項目名は、マザーボードによって画面上の表記は異なるが、通常は「M.2_X PCIE Storage RAID Support」や「RST Pcie Storage Remapping」などと表記されている。PCH Remapped PCIeコントローラーの機能をサポートしたマザーボードならSATAの動作モードをRAIDに変更すると、これらの設定項目が表示されるので、Optane Memoryを装着したM.2スロットの設定を「オン(Enable)」に設定する。

ASUSのマザーボード「PRIME Z270-A」のUEFI設定画面。PRIME Z270-Aでは、SATAの動作モードに「Intel RST Premium With Intel Optane System Acceleration(RAID)」を設定し、Optane Memoryを装着したM.2スロットの「M.2_X PCIE Storage RAID Support」を「Enable」に設定する。

 なお、PCH Remapped PCIeコントローラーの機能をオンにしたM.2スロットは、PCHのRAID機能の管理下におかれ、通常のM.2スロットとは別の制御となる。このため、デバイスドライバーもWindowsに標準で備わっているNVMe用のインボックスドライバー(StoreNVMe.sys)ではなく、IntelのRAIDドライバーをインストールする必要があることを覚えておいてほしい。



Core i9-7900X&Core i7-7740X速攻レビュー

最新パーツ性能チェック
第214回

Skylake-Xの10コアはCINEBENCH R15で約2200スコアー!

今回入手したCore i9-7900X(左)とCore i7-7740X。ともにエンジニアリングサンプル(ES)版であるため、出荷された製品とは微妙に性能が違う可能性もある。

 インテルが2017年6月のCOMPUTEX TAIPEIで発表した「Core Xシリーズ」のうち、比較的コア数の少ないモデル5製品(Core i9-7900X、Core i7-7820X、Core i7-7800X、Core i7-7740X、Core i5-7640X)の出荷が秒読み段階に入った。近頃のインテル製品には珍しく、まだ正式な価格も公表されていない慌ただしい状態だが、この状態を生み出したのは黒船「Ryzen 7」の存在であることは明かだ。

 8コア/16スレッドで同価格帯のインテル製CPUよりマルチスレッド性能で上回るRyzen 7のインパクトは、Core Xシリーズの登場を前倒しさせるのに十分な力を持っていたようだ。

 今回は運良くCore Xシリーズのうち、10コア/20スレッドの「Core i9-7900X」と、4コア/8スレッドの「Core i7-7740X」のエンジニアリングサンプル(ES)版を入手することに成功した。ただ、今回は検証と原稿執筆にかけられる時間が半日程度と厳しいため、主に定格での性能を中心に検証することにする。

Core Xシリーズには2種類のコアが存在

 すでに当サイトでもCore Xシリーズについて報じてはいるが、ここで簡単にまとめておこう。今回登場したCore Xシリーズは、エンスージアスト向けCPUラインの最新モデルというべきもの。ソケットは従来の「LGA2011-v3」から「LGA2066」に変更されたが、製品のコア数が幅広いのが旧世代製品と決定的に違う点だ。

 4コア/4スレッドの「Core i5-7640X」と「Core i7-7740X」の2つは“Kaby Lake-X”のコード名で開発されてきたもの。Kaby Lake-SのK付きモデルと基本スペックは同じ(メモリーもデュアルチャンネル)だが、わずかにクロックが高く設定されている。高クロックを狙いたいオーバークロッカー向けのラインだ。

 そして、残りの6コア12スレッド以上の製品は“Skylake-X”のコードネームを持った製品群だ。前世代にあたるBroadwell-Eの後継にあたるが、直近でリリースされる(7月には発売しているだろう)のは10コア/20スレッドのCore i9-7900Xまで。12コア/24スレッドのCore i9-7920Xは8月、14/16/18コアの製品については10月をめどに調整が進められている状態だ。

 Kaby Lake-XとSkylake-Xという設計ルーツの違う製品を1つのソケットに統合したのがCore Xシリーズの面白さと言える。しかし、対応するIntel X299チップセット搭載マザーボードの中には、Kaby Lake-Xには対応しない製品も存在する。Core XシリーズのメモリーはDDR4-2666を正式サポートしたが、Skylake-Xはクアッドチャンネル、Kaby Lake-Xはデュアルチャンネルなのでメモリーモジュールの搭載パターンが異なることに起因するようだ。

 詳しくは各マザーボードメーカーのサイトにあるIntel X299チップセット搭載マザーボード用のマニュアルを参照して頂きたいが、今回テストしたマザーボードにKaby Lake-Xを搭載した場合は、CPUの片側4スロットのみが有効になった。両側のスロットを使うためにはSkylake-Xでなければならないのだ。



左がCore i9-7900X(Skylake-X)、右がCore i7-7740X(Kaby Lake-X)。ヒートスプレッダーの形状が微妙に違うことと、Skylake-Xは表側にもチップ(右上)が搭載されている点に注目。Kaby Lake-Xのバッチナンバーは「L647」だが、筆者が購入した製品版のCore i7-7700Kが「L638」。製品版Kaby Lakeのすぐ後に製造されたことになる。



こちらも左からCore i9-7900X、Core i7-7740X。キャパシターの数が多いほうがSkylake-Xだ。



「CPU-Z」でCPUの情報を拾ってみたところ、Core i9-7900X(左)は「Core i7-7900X」と表示されていた。これはCore i9ブランド決定はES版が出てから決まったことを示唆している。ちなみにCore i7-7740Xも「7740K」と表示されるES版があるらしく、これもES版製造後に変更されたことを示している。



ちなみに「HWiNFO64」の一番新しいベータ版では、ちゃんとCore i9-7900X表記になっていた。Core i9-7900Xのメモリーはクアッドチャンネル、Core i7-7740Xはデュアルチャンネル表記(右下部分)になっている。

 上記で示した通り、まだ正式に出ていないCPUなので各種ツールが対応しきれていない状況だ。「CPU-Z」やタスクマネージャーではCPU名が正しく表示されないほか、「HWiNFO64」ではセンサー一覧でベースクロックが96MHzと誤認されるなどの不具合も見られた。どちらも製品版や対応版待ちになる。

動画変換処理中にHWiNFO64でクロックを拾ってみたところ。テストに使ったHWiNFO64はベースクロックを100ではなく96MHzと誤認するため、中途半端な値になっている。3840MHz(96MHz×40倍)のコアは実際には4GHz、3456MHzのコアは3.6GHz(96MHz×36倍)動作となっている。

 今回は検証時間が極めて限られていたため、比較対象はCore i7-7700Kのみに絞り込んだ。Core i9-7900XとCore i7-7740Xがどの程度Core i7-7700Kより優れているのかを検証する。さらに、Core i7-7740XをBIOS上で倍率50倍、5GHz動作にオーバークロック(以下、OC)した際のパフォーマンスもチェックした。

 なお、Intel X299チップセット搭載マザーボードのBIOSは原稿執筆時点での最新版(0402)、メモリーはすべてDDR4-2666の4枚挿しに統一している。

Core i7-7740XはBIOS上で倍率50倍(電圧はAuto)にしただけで、あっさりと5GHzで動作した。

【検証環境】
CPU:Intel「Core i9-7900X」(10コア/20スレッド、3.3GHz、最大4.3GHz)、Intel「Core i7-7740X」(4コア/8スレッド、4.3GHz、最大4.5GHz)、Intel「Core i7-7700K」(4コア/8スレッド、4.2GHz、最大4.5GHz)
CPUクーラー:CRYORIG「A40」(簡易水冷、240mmラジエーター)
マザーボード:ASUS「ROG STRIX X299-E GAMING」(Intel X299)、ASRock「Fatal1ty Z270 Gaming K6」(Intel Z270)
メモリー:Corsair「CMU16GX4M2A2666C16R」(DDR4-2666、8GB×2)
グラフィック:NVIDIA「GeForce GTX 1080 Founders Edition」
ストレージ:Crucial「CT1050MX300SSD3/JP」(M.2 SATA SSD、1050GB)
電源ユニット:Silverstone「ST85F-PT」(850W、80PLUS PLATINUM)
OS:Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(Creators Uptade適用)

まずは3DCG系ベンチで10コア/20スレッドの破壊力を確認

 それでは定番「CINEBENCH R15」のスコアー比べから始めよう。10コア/20スレッドの破壊力はもちろんだが、インテル製CPUの強みであるシングルスレッド性能がどの程度か気になるところだ。

「CINEBENCH R15」のスコアー。

 Core i9-7900Xのマルチスレッド性能はCore i7-7740Xの2倍以上。あくまで原稿執筆時点でのウワサでは、Core i9-7900Xの予価は11万円前後、Core i7-7700Kが4万円程度。なので、価格なり……とは言いがたい部分はある。だがCPU1基2000ポイント超は見ていて気持ちがいい。

 そして、何より驚いたのは定格運用の状態でCore i9-7900X、Core i7-7740X、Core i7-7700Kのシングルスレッドスコアーが同一ラインであることだ。コア数が多いCPUはクロックを抑える関係上シングルスレッドが弱くなる傾向が強いが、Core Xシリーズはシングルスレッドも強い。ライバルのRyzenはシングルスレッド性能が弱いため、マルチもシングルもどちらも強いCPUが欲しいなら、Core Xシリーズは非常に魅力的な選択だ。

 次は同じ3DCG系である「V-Ray Benchmark」を試してみよう。CPUかCUDAを使ってレンダリングするベンチだが、CPUだけ使うテストでの処理時間を比較する。

「V-Ray Benchmark」の処理時間。

 こちらもコア数の多いCore i9-7900Xが圧勝。時間の比率もCore i7-7700Kのほぼ半分になっているなど、CINEBENCH R15のスコアー比に近いものが出ている。



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