4兆円有機EL市場狙う日本勢、周辺技術で高シェア-アップルが号砲 – ブルームバーグ



アップルの新型「iPhone(アイフォーン)」への採用で、有機EL(OLED)の本格普及に向けた号砲が鳴った。パネルで優位に立つ韓国、関連投資を拡大する中国に挟まれた日本はディスプレー製造に関わるコア技術や新素材で既に高シェアを握り、量産化でさらなる収益獲得を狙っている。

  液晶は、発光に背面から光を照射するバックライトが必要だ。一方、有機ELの最大の特徴は樹脂材料に電流を流すことで自ら発光する点にあり、画質の良さや薄型化が可能という利点を持つ。1980年代から有機ELの開発は続けられてきたが、製造が難しく、プラズマや液晶が先行して普及。アップルの新スマートフォン(スマホ)への搭載が取り沙汰されるようになった2015年以降、有機EL市場の拡大機運が再燃し、サムスン電子など韓国勢が液晶から有機ELパネルへ一気にかじを切った。

  アドバンスト・リサーチの黒澤真シニアアナリストは、「蒸着タイプのOLEDパネルで韓国勢に遅れをとった日本勢の生きる道は『部材』と『装置』。必要不可欠な部材のほとんどで日本勢が高シェアを握っており、2020年以降の有機ELテレビの大型化でより一層活躍の場は広がっていく」と予想する。

  IHSマークイットは7月、スマホ向け有機ELの出荷額が17年に227億ドル(約2兆4800億円)に達し、214億ドルの液晶を初めて上回ると予測した。21年までにはテレビ向け需要の拡大も加わり、年平均で22%成長、400億ドルを超すとみる。

  有機ELパネルをつくる製造ラインで使われるエキシマレーザーアニール(ELA)装置で70%以上のシェアを持つのが日本製鋼所だ。95年に世界に先駆けELA装置の製品化に成功、納入実績が評価され、15年以降はアップルのサプライヤーである中国企業の新規製造ラインでの採用が相次いだ。レーザー・プラズマシステム室企画管理部の大津英彦部長によると、ELA装置の売上高ピークは16年3月期の326億円。しかし、「iPhone新機種の発売をきっかけにエンドユーザーの間で有機ELに対するニーズが高まれば、パネルメーカーから次の製造ラインを作ろうという動きになっていく」とし、20年にかけ需要は再度伸びると読む。

  丸三証券の佐原孝輔アナリストは、テレビ需要の拡大などで有機ELの製造ラインが大規模化すれば、周辺装置も含め1台当たり単価が上昇し、日製鋼の収益は拡大基調をたどるとみる。

  スマホの発色や照度をチェックする光学測定機器メーカーのコニカミノルタは、ディスプレー向けシェアで50%超とトップ。センシング事業本部企画部の小松洋子課長は、顧客の需要を受け有機EL向け製品群を拡充してきたとし、「光学測定機器を含む計測機器事業の売上高を向こう3年間で2倍にする」との目標を明らかにした。

  スマホ向けディスプレーメーカーが現在抱える悩みは、有機EL製造ラインの歩留まりが改善しない点だ。顧客がラインの微調整を続ける中、コニカミノは検査回数や項目増加などのプラス効果を得ている。計測機器事業の16年3月期売上高は267億円だった。

  iPhone新機種「X(テン)」では採用されなかったが、来年以降の次期機種での採用予測があるのが折り曲げ可能なフレキシブル有機ELディスプレーだ。これに使われるポリイミド樹脂で先行するのが宇部興産。液状ポリイミド製品「ワニス」は、セ氏500度以上の高温焼成下でもきれいな膜を形成できる。11年に携帯電話生産で世界最大手の韓国サムスンと提携し、合弁会社が開発した有機ELディスプレーは15年夏投入のサムスンのスマホ「ギャラクシーS6 エッジ」に搭載された。

  宇部興のポリイミド営業開発グループリーダーを務める下川裕人氏は、「サムスンとの合弁でポリイミド製品と言えば宇部興産、と言ってもらえるようになった」と話す。同社では素材別の収益実績や将来見通しを公表していないが、ポリイミド製品群の18年売上高は10年と比較し、1割増えると予測。今後はサムスン以外にもワニスを供給する方針だ。

  SMBC日興証券の竹内忍シニアアナリストは、「中国勢は採用実績のある部材を使いたいという傾向が強い。『ワニス』が既に業界標準となっているところが最大のアドバンテージ」と分析。今後は、フィルム製造など付加価値の高い川下分野まで宇部興が手掛ける可能性もあり、「将来的に業績インパクトも大きくなっていく」との見方を示した。

  有機EL関連銘柄の株価の年初来パフォーマンスをみると、日製鋼は14日時点でプラス55%、宇部興がプラス33%。それぞれが属する東証機械株指数のプラス28%、化学株指数のプラス32%を上回っている。




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